星降る夜の奇跡 – 第2話

サヤが素直に疑問をぶつけると、ユウタは少し口ごもったようだったが、意を決したように続ける。「うん、そうなんだ。俺、よく夜に山道を登って天体望遠鏡で星を見てるんだ。星って、すごく遠いのに、俺たちをずっと見ているみたいでさ」

「私、昨日、村に着いてから夜空を見上げて、本当に驚いたの。こんなに星って見えるものなんだって。都会では見られなかったから……」

サヤは昨夜の光景を思い浮かべる。ビルの街明かりに埋もれて星が見えない都会とは違い、ここでは夜になると世界が闇に包まれて、星だけが際立っていた。「どうして、ユウタはそんなに星に惹かれるんだろう?」そんな疑問が自然と湧き上がり、サヤは声に出して尋ねる。

ユウタは一瞬、視線をノートに落とし、それから少し苦笑した。「理由を聞かれると恥ずかしいんだけど……俺、幼い頃に見た流星群が忘れられなくて。そのとき、夜空のどこからともなく無数の光が一瞬で流れ落ちてきて、まるで自分の頭上いっぱいに広がる宝物みたいに見えたんだ。それ以来、星には名前や神話があって、しかもみんなが見上げている同じ空にあるのが不思議でならない」

「神話かぁ。神話って、星座の名前の由来になってるってことは、なんとなく知ってたけど」

「うん。でも、その背後にある話って結構面白くて、悲しかったり、勇敢だったり、いろんな物語があるんだ。星々が持ってる秘密っていうか、そういうのを一つひとつ知っていくのが楽しい。ああ、なんか偉そうに語ってるけど、要するにただの星好きなんだよ」

照れたように言葉を濁すユウタだったが、その瞳には明らかな熱量が宿っているのをサヤは感じた。まだ会って数分しか経っていない相手だけれど、そのまっすぐな姿勢や、素朴で飾り気のない話し方に好感を抱く。何より、彼が星に魅せられている理由が、なんとなくサヤにもわかる気がした。夜空を見つめると、不思議と心がすっと落ち着く。それまであった悩みや不安が、少なくとも一瞬は軽くなる感覚を得られるからだろうか。サヤは昨夜の感動を思い返しながら、胸の奥にほんのりとした温かさを覚える。

「それにしても、望遠鏡で星を見るなんて、素敵だね。私、ちゃんとした望遠鏡で星空を見たことないんだけど、どんなふうに見えるんだろう」

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