星降る夜の奇跡 – 第3話

「本当は大学で天文をしっかり学びたかった。望遠鏡を買ってもらえたのがすごく嬉しくて、毎晩のように星を見てた。だけど、家のこととか、お金のこととか……大人になると、いろんなことで夢が遠ざかる。俺にはどうしようもない状況だったんだ。だから、せめてここで星を見ながら自分なりに学んでいこうって決めた」

夜空の下で、二人だけが小さなランタンの明かりに照らされている。その距離感が、都会にはない親密さをもたらしているのだろう。お互いの胸の内を少しずつさらけ出すことで、言葉にならない安心感が漂い始めるのをサヤは感じる。都会での日々に追われていた自分は、自分自身の声を聞けなくなっていた。ここでユウタに会い、星を見上げながら話すことで、胸の奥底の思いが少しずつ解けていくような気がする。

しかし同時に、サヤの心の中でひっかかるものがあった。ユウタがこれほどまで星に執着しているのはわかった。けれど、それは単純な「好き」という言葉だけでは片付けられない、何か深い理由があるようにも感じられるからだ。流星群をきっかけに星を好きになったというエピソードは聞いたが、同時に、なぜそこまで星に対して一途に情熱を注げるのかを探りたくなってしまう。サヤはふと、隣で黙りこんだユウタを見つめ、「星を調べることって、ユウタにとってどういう意味なんだろう……」という疑問が頭に浮かんでいた。

ユウタは幼い頃に抱いていた「天文学を学ぶ」という夢を思い出しているようだったが、それが叶わなかったという事実が彼の胸に影を落としているようにも見える。サヤ自身、都会での仕事を捨ててここに来たものの、これからどうするつもりなのかはまだはっきり答えを出せていない。二人はそれぞれ、叶わなかった夢や挫折を抱えながら、今こうして山の展望台で星を見上げている。その共通点に、サヤは言いようのない切なさと安堵の両方を感じた。ユウタのように、一度は諦めてしまった夢を、星を見ることによって紛らわしている面があるのだろうか。

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