星降る夜の奇跡 – 第4話

「ユウタ!」

サヤが近づくと、ユウタは土まみれの手を拭いながら、「サヤ、来てくれたのか。危ないから無理しなくていいのに」と声を掛けてくれる。

「そんなこと言ってられないよ。わたしも手伝うよ。なにをすればいい?」

「土嚢を運ぶのを手伝ってほしいんだ。雨は止んだけど、また降ったらここが崩れる可能性がある」

ユウタに案内され、サヤは他の村人たちとともに土嚢運びを始める。水を含んだ土は重く、足元も悪いため、何度も足を取られそうになる。転倒して泥だらけになる人もいるが、それでも黙々と作業を続けている。都会でのデスクワーク中心の暮らしをしていたサヤにとって、これはまさに未知の労働だった。だが同時に、こんな厳しい環境の中で村の人々が互いを助け合いながら生きていることを実感し、強い印象を受けてもいた。

作業がいったん落ち着いたのは夕方近くだった。あたりは薄暗くなり始め、残った人たちがそれぞれの道具を片付けたり、崩落した部分の確認を行ったりしている。サヤは腰に手を当てて息を整えながら、ユウタと顔を見合わせた。

「まさか、こんなに大変だとは思わなかった……」

「ここは自然がきれいだし、星だってきれいに見えるけど、そのぶん厳しい面もあるんだよ。いつもは穏やかだけど、ひとたび災害が起きると大きな被害に繋がることがある」

サヤはその言葉を噛み締めながら、まだ泥のついた軍手を外した。たしかに、都会の暮らしとは違う大変さがある。こんな状況に何度も遭遇しなくてはいけないのだと考えると、ふいに心細さが募る。今は村の人々が助け合い、復旧作業に励んでいるが、この先もずっとやっていけるのだろうか。昨日まで落ち着きを取り戻しつつあったサヤの心に、また新たな不安が芽生え始めていた。

タイトルとURLをコピーしました