星降る夜の奇跡 – 第4話

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雨が降り始めたのは午後からだった。最初はしとしとと穏やかな雨音だったが、夕方を過ぎる頃にはまるで空が壊れたように大粒の雨が叩きつけてくる。サヤは古民家の縁側に立って、遠くの山並みが濃い灰色のベールに隠れるのを不安げに眺めていた。天気予報でも大雨注意報が出ていたとはいえ、ここまで激しくなるとは思っていなかった。村の人々は早めに家へ戻り、戸締まりを厳重にして夜をやり過ごそうとしている。それでも山奥の集落では、時に自然災害が大きな被害をもたらすことがあると聞いていたため、サヤは胸騒ぎを抑えきれない。

翌朝、雨はようやく小降りになっていた。だが、窓を開けてみると空気がどこか重苦しく、地面はぐしゃぐしゃに濡れたままだ。外へ出ると、山道を通る川が異様なほど増水し、あちこちから土砂や濁流のにおいが立ち上っているのがわかる。そんな中、ミツエが慌てた様子で家の前まで来た。

「サヤちゃん、大丈夫? 裏山のほうで土砂崩れが起きたらしくて、村の人が総出で様子を見に行ってるのよ」

「えっ、土砂崩れ……? けが人とか、大丈夫なんでしょうか」

「それがまだ詳しい状況はわからないの。でも相当ひどいらしいから、土嚢を積んだりして被害が広がらないようにしないとね。みんなで手伝うことになりそう」

サヤはすぐに長靴を履き、防水の上着を羽織って家を出た。山道を歩いていくと、見るからに危険なほど地盤がゆるんでおり、あちこちに流れ込んだ泥水が溜まっている。深夜の大雨のせいで、一部の道はほぼ川のような状態だ。やがて、何人もの村人が急斜面の前に集まっているのが見えた。声を張り上げながら救助や土砂対策に忙しそうに動き回っている。そこにユウタの姿もあった。

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