星降る夜の奇跡 – 第4話

翌日からも、土砂対策や崩れそうな箇所の点検など、やることは山積みだ。サヤも疲れを抱えながら早朝から手伝いに出かける。重い土嚢を運ぶたび、腰と腕が悲鳴を上げる。都会育ちの自身の非力さを痛感する一方で、「私もこの村の一員として頑張らなきゃ」と気持ちを奮い立たせる。だが、そんな中で、ユウタは表情がどこか暗いままだ。さらに悪天候が続き、夜になっても雲が厚く空を覆っているせいで、星を見ることができない。ユウタは焦るように、「いつになったら星が見られるんだろう」と何度もつぶやいていた。

ある日、作業の合間にサヤが一息ついていると、ユウタが近寄ってきて、苛立ちを含んだ声で言う。

「くそっ……こうも曇りが続くと、星の確認もできやしない。星が見えないと、なんだか落ち着かないんだよ」

「星、か。たしかにずっと雲が多いね。でもそんなにイライラしても仕方ないんじゃない?」

サヤとしては当たり前の感想を口にしたつもりだった。しかし、ユウタは険しい表情をそのままに、鋭い口調で言葉を返してくる。

「仕方なくない。星空が見えないと、俺は……」

そこまで言いかけたところで、ユウタは言葉を飲み込んだようだったが、サヤはその態度に少なからず戸惑いを覚えた。どうしてそこまで星に対して切迫した思いを抱くのか。一緒に星空を眺めているときはその情熱が魅力的に思えたが、今は理解できない面も感じてしまう。復旧作業の重圧やストレスも相まって、二人の会話はぎこちないまま終わり、その日はほとんど言葉を交わさなかった。

それから数日が過ぎても、依然として天候は不安定で、星空どころか月さえまともに拝めない夜が続いた。作業の疲れが取れず、サヤもイライラを抱えがちになる。一方のユウタは相変わらず星が見られないことへの焦りを募らせているようで、以前のようなゆったりとした雰囲気はどこかに消えていた。お互いに疲れ切っているせいか、小さなことで言い合いになりそうになることもしばしばだ。

タイトルとURLをコピーしました