星降る夜の奇跡 – 最終話

サヤは笑顔でそう答えて、パソコンの画面をユウタに見せる。そこには試作中のパンフレットレイアウトが表示されていた。夜空を背景に、村の風景や人々の温かさが伝わる写真を並べている。ユウタはそれを覗き込みながら、「すごいな……まるでプロみたいだ」と感心したように声を漏らす。

「一応、都会でデザインの仕事やってたからね。ちょっとくらいは役に立つかも」

「もっと自信を持てばいいのに。サヤはすごくセンスがいいし、説明文も読みやすいよ」

そう言われると、サヤは少し照れくさくなり、「ありがとう」と小さく笑うだけだった。けれど内心では、都会で仕事をしていたころにはなかなか得られなかった“素直に褒められる喜び”を噛みしめていた。

数日後、ユウタとサヤは村役場の担当者を訪ね、星の観察会や自然散策ツアーなどをセットにした企画を相談する。最初は「本当に人が集まるだろうか」と半信半疑な村の職員だったが、サヤが用意したパンフレットのデザイン案や、ユウタの熱意に満ちた星空の魅力説明を聞くうちに、次第に顔をほころばせる。

「なるほど、そこまでしっかり考えているなら、こっちもできる限り協力するよ。村の宿泊施設や直売所とも連携すれば、もっと盛り上げられるかもしれないね」

役場の担当者からそう言ってもらい、ユウタとサヤは安堵の笑みを浮かべる。さらに、「若い人たちが頑張ってくれるなら嬉しいわ」と、地元の人々も知恵を出し合ってくれる流れになった。イベント時に提供する地元の食材を集めたり、夜間の安全確保のために村の消防団に協力を依頼したりと、少しずつ形が見えてきた。星の観察会が成功すれば、今後はもっと大規模なツアーや子ども向けのワークショップなど、拡張できる可能性もある。村に新たな風が吹き始めていることが、二人にははっきりと感じられた。

タイトルとURLをコピーしました