星降る夜の奇跡 – 最終話

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ユウタとサヤが見事に星空の奇跡を掴みとってから、時間はゆるやかに、しかし確実に流れていった。あの夜をきっかけに二人は自分たちが本当に歩みたい道を見定め、悩み抜いた末にそれぞれの決断を下している。村の生活にもだいぶ慣れはじめ、日常の穏やかなリズムを大切にしながら、少しずつ新しい挑戦へと踏み出していた。

ある日の昼下がり、サヤは古民家の縁側でパソコンを開いて資料づくりに没頭していた。村役場から依頼を受け、観光客向けのパンフレットのデザイン案を作成しているのだ。お手製の写真や文章をレイアウトしていくうちに、都会では味わえなかった面白さを感じている。サヤはグラフィックソフトを使い慣れていたが、都会にいたころはクライアントに振り回されるばかりで、やりがいを見失うことが多かった。ところが今は、村の魅力を発信するための作業が楽しくて仕方がない。何より自分が心からいいと思える星空や自然の風景を紹介できるのが嬉しかった。

「サヤ、ちょっといい?」

そこへ、星座早見盤や観測ノートを抱えたユウタが声をかけてきた。彼は先日から子どもたちや観光客に向けて星の観察会を開けないかと考えていたのだ。夜空に広がる星座の解説、望遠鏡を使った観測の体験、さらには流星群のタイミングを狙ったイベントなど、様々なアイデアが浮かんでいるらしい。ユウタ自身も「星の素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしい」という強い思いを抱いていたが、それを行動に移すのは簡単ではない。村に長く住んでいるとはいえ、商売や集客のノウハウに詳しいわけでもないし、資金や設備の問題もある。けれど「やっぱりやりたい」と心が叫ぶのだという。

「もちろん協力するよ。今ちょうど、村の観光パンフレットを編集してるところだから、上手くリンクさせられないかなって思ってたところ」

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