ニューロネットの夜明け – 第3章:意識を繋ぐネットワーク|後編

エリカは気を取り直したように作業用の椅子をぎしりと引き、キーボードに手をかける。幼少期のフラッシュバックを抱えながらも、行動する以外に選択肢はない。

「私は止まれない。今、ここで黙っていたら、また誰かがあの苦しみを味わう。同じことが繰り返されるのは許せない」

ミアは小さくうなずく。エリカの強情さは昔から知っているが、これほどまでに執念を燃やす彼女を見るのは久しぶりだった。それだけ過去のトラウマが根深いことを痛感する。

「わかった、私も付き合う。実験データの拡散や調査協力はできる限りサポートするから。でも、無理はしないで。あなた一人が犠牲になっても何の意味もないんだから」

エリカはミアの言葉にうっすらと微笑み、感謝の気持ちを込めた視線を向ける。隙間風の吹き込む倉庫の一角で、二人は再び行動計画を立て始める。まずはこの断片データのさらなる解析と、安全なルートを確保したうえでの情報拡散。その先に、政府研究所への直接的な糸口を探すことになるかもしれない。

「やっぱり、レオナルドの動きを追うのも必要かも。ヴァル・セキュリティが絡んでる以上、彼が何を掴んでいるのか知る価値はあると思う」

エリカは再びレオナルドの名前を口にする。ミアも軽く頷くが、その表情には不安の色が消えない。企業だけではなく、政府の影がちらつく今、レオナルド個人の良心を頼りにするのはリスクが大きい。しかし何もしなければ、謎の研究は加速してしまうだろう。

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