「さて、次のステップだが……実はヴァル・セキュリティ本社か政府研究所のどちらを先に狙うか、意見が割れている」
サイモンは投影されたホログラムのうち、ヴァル・セキュリティのビル構造図を拡大する。そこには幹部用セクションやセキュリティフロアの階層が詳細に描かれていた。
「企業を先に叩いて情報を引き出すのか、それとも実験施設を強襲して被験者を解放し、研究データを持ち出すのか。君の意見が聞きたい」
エリカは唇を噛む。どちらを選んでもリスクが大きいが、まずは内部情報を確保することが最優先だ。
「政府研究所は警備が手厚いし、失敗すれば大ごとになる。ヴァル・セキュリティには、私の知り合い——レオナルドがいる。彼から内部情報を引き出せれば、研究所への突入も少しは楽になるんじゃないかと思う」
会議の場にいるメンバーたちがざわつく。強硬派の男がまた口を挟む。
「内部関係者の力を借りるってことか? 裏切るかもしれない奴に賭けるのは、あまりに危なっかしいな」
「確かにリスクはある。でもレオナルドがプロジェクト・シナプスの中心に近い存在なら、情報を引き出す価値は大きい。私なら彼に会える可能性がある。敵対してるけど、過去に因縁があるから……」
エリカの言葉を聞き、サイモンは興味深げに頷いた。
「わかった。じゃあ、まずヴァル・セキュリティへの潜入とレオナルドとの接触をメインプランにしよう。君をサポートするチームと装備をこちらで用意する。もちろん、強硬派には研究所への道筋を同時並行で準備させるが、行動するかどうかは状況次第ということで」
作戦概要がまとまりかけたところで、エリカはアジトの部屋をぐるりと見回す。灰色のコンクリートに囲まれた場所で、人々の顔にはさまざまな思惑が渦巻いている。これが本当に正しい選択なのかはわからない。しかし、彼らの情報網や資金源は明らかに魅力的であり、敵に回したくない力でもある。
「いいだろう。細かいプランは後日詰めよう。まずはここにあるデータを精査して、潜入ルートを固めてくれ」
サイモンが周囲のメンバーに指示を出すと、円卓の一角にいた数名が端末や書類をかき集めて別室へと移動し始めた。エリカはその光景を眺めながら、気持ちを引き締める。



















