「やっぱり不安だな。向こうがどこまで信用できるのかもわからないし、強硬策に巻き込まれたら大変だよ」
「私だって同じ気持ち。でも、ほかに方法がないのも事実。まずはレオナルドを探ってみる。彼がどこまで協力してくれるかは未知数だけど、ここに来て名前が何度も浮上するなら無視できない。プロジェクト・シナプスのキーマンである以上、話をする価値はある」
ミアはアジトの薄暗い照明の下で、手元の端末をいじりながら眉をひそめる。
「わかった。私も作戦のサポートをするよ。ただし、最悪の場合に備えて撤収プランは考えておいて。何かあったら、無理に突き進まないで逃げることも必要だからね」
エリカはその言葉に小さく頷く。インフォリベレーションからバックアップを得るとはいえ、全面的に信用できるわけではない。逃走経路やデータの分散保存など、やるべきことは山積みだ。
こうして、彼女たちは“ヴァル・セキュリティ潜入”と“研究所への反撃”という二つの道を同時に模索し始める。目の前には危険が待ち受けているが、ここまで収集してきた情報を活かすならば、今が動き出す最適なタイミングかもしれない。エリカの胸には恐怖と決意が複雑に絡み合っていたが、ひとつだけ確かなのは、もう後戻りできないということだ。
倉庫の天井付近で点滅する蛍光灯が、かすかな音を立てている。エリカは不安げなミアの肩に手を置き、穏やかな声で励ます。
「大丈夫。私たちならやれる。色々大変だけど、まずは潜入プランを詰めよう」
ミアは微かに笑みを返す。そうして二人の覚悟が固まっていく中、インフォリベレーションとの共同作戦が少しずつ形を成そうとしていた。外の夜風が倉庫の隙間から入り込み、埃を舞い上がらせながら、暗闇の未来へと彼女たちをいざなうように冷たく吹き抜けていった。



















