ニューロネットの夜明け – 第7章:研究所への突入|後編

「これを見て。私は既に複数の意識を取り込む実験を完了した。人間同士の思考や感覚を完全に共有するのは、ほんの一歩先にある現実よ。あなたもその素晴らしさを体験してみない?」

「ふざけないで。そんな強制的な共有、個人の尊厳を踏みにじるだけじゃない!」

エリカは息を荒げながら叫ぶ。脳裏には、自分が幼少期に味わったチップ誤作動の苦痛がよみがえっていた。

ビアンカはかすかに微笑みを浮かべると、片手で自分のこめかみを指し示した。

「個人の尊厳なんて、結局は誤解や憎しみを生む原因にしかならない。この研究が進めば、人々の間に生じる不和や争いはすべて消滅するのよ。私はあなたにもこの新しい世界を見てほしいの。意識を融合すれば、あなたの痛みや恐怖だって消せるかもしれないわ」

次の瞬間、ビアンカは高性能チップを介してエリカの脳内へアクセスを試みる。途端にエリカの視界が歪んだかと思うと、まるで思考空間のような抽象的なイメージが広がっていく。周囲から聞こえていた警報音やサイモン、ミアの声は遠のき、エリカの意識はビアンカの“意識圏”に引きずり込まれていた。

「私と共に進化を遂げましょう。意識が溶け合うとき、私たちは真の平和を得られるのよ」

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