ニューロネットの夜明け – 第7章:研究所への突入|後編

一方、その実験室では、エリカが身を固くして動けなくなった隙に、サイモンとミアがメインフレームの制御装置を探し始めていた。大型のコンソールやケーブルが乱雑に伸びる奥に、巨大なサーバーラックらしき装置が鎮座している。これが“意識統合”の大規模実験を支える中枢部なのだろう。

「ミア、できるだけ短時間で停止させられない?」

サイモンが焦るように問いかけ、ミアはタブレットを開いたままケーブルを見比べる。

「制御プログラムを無効化するには時間がかかりそう……。物理的に破壊するしかないかもしれない!」

サイモンは少し躊躇しつつも決意を固める。インフォリベレーションのメンバーが使っていた小型爆破装置や破壊用ツールが手元にある。ここを破壊すれば、実験システムはしばらく再起動できないはずだ。しかし、それには警備やセキュリティの再起動までの猶予をうまく活かす必要がある。

「わかった。遠隔サポートが今、警備システムを混乱させてる。何とか30秒から1分くらいの猶予は作れるはず。その間にメインフレームを……」

ミアが急いでサーバーラックの下部に向かい、保護パネルの固定ネジを外す。高圧ケーブルが束ねられているのを見つけ、そこに破壊ツールを仕掛ける。サイモンは周囲を警戒しつつ、同時に爆破装置を準備した。

「スイッチを入れるよ、いい?」

「待って、ギリギリまでプログラムを止められないか試してみる」

ミアが端末を素早く操作し、実験システムへのアクセスを試みるが、パスワードが何重にも設定されているらしく容易には入れない。さらに警備システムが復旧し始めたかのように、部屋の入口付近で警報ランプが再び激しく点滅した。

「時間切れか……」

サイモンは歯がみしながら決断し、破壊ツールの起動スイッチを押す。低いモーター音と共にケーブルを切断するブレードが高速回転し、厚い保護カバーごと切り裂いていく。火花が散り、ラック内部から焦げた臭いが立ち上る。サイモンはすかさず爆破装置をケーブル束の奥に押し込み、信管を作動させる。

タイトルとURLをコピーしました