ニューロネットの夜明け – 第7章:研究所への突入|後編

一方、思考空間の中では、ビアンカとエリカの対峙が激しさを増していた。ビアンカは己の研究が完遂されようというこの瞬間、エリカを取り込むことでさらに大きな成果を得ようとしている。しかしエリカは、強い意志で精神的な結合を拒絶し、ビアンカの押し込んでくる思考波を跳ね返そうとする。

「あなたが見ているのは幻想よ。個の自由を捨てれば、争いは消えるかもしれない。でも、そこには人間らしさも生き方もない!」

エリカが叫ぶと、空間が閃光のように揺らぎ、ビアンカの形が一瞬淡くなる。ビアンカは苦しげに表情を歪ませ、チップの制御が揺らいでいるようだ。

「なぜ、理解しないの……。意識をひとつにすれば、争いも痛みも消えるのよ……」

ビアンカの声が弱々しく響いた瞬間、現実世界で大きな破壊音が響いた。サイモンとミアが仕掛けたツールが一気に火花を散らし、メインフレーム内部でスパークが起きる。加えて小規模な爆発が発生し、ラック内部の基板やケーブルが焦げた煙を上げる。

「行くわよ!」

ミアが叫び、サイモンと共にラックから離れる。火花が飛び散る中、装置が停止していく様子がわかる。警告音が反響し、赤いランプが断続的に点滅を繰り返している。意識統合の大規模実験を支える核心部分が機能不全に陥ったことで、システム全体が停止する可能性が高い。

すると、思考空間の中でも急激な揺れが走った。ビアンカの意識が一気に乱れ、エリカを拘束していた力が弱まる。エリカはその隙を見逃さずに意識の接続を断ち切ろうと強い意志をぶつけた。

「私の思考は私だけのもの。あなたに支配されるわけにはいかない!」

バチッという音と共にエリカの視界が正常に戻り、息を切らして膝をつく。ビアンカもまた苦しげに頭を押さえ、その場で崩れ落ちそうになっている。激しい衝撃でチップが過負荷に陥ったのか、眉間に深い皺を刻んで喘ぐような息をついている。

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