序章 第1章:前編|後編 第2章:前編|後編 第3章:前編|後編
第4章:前編|後編 第5章 終章
新たな朝へ
街に朝が訪れていた。
長い間、同じ歩幅と呼吸に縛られていた人々は、今ようやく“自分の呼吸”で息をしていた。
泣く者、笑う者、座り込む者、走り出す者。
整列していた列は崩れ、代わりに“雑音”が生まれていた。
その雑音は、心地よかった。
遥斗はビルの屋上に立ち、街を見下ろした。
胸の奥で心拍が鳴る。まだ不規則で、半拍遅れが混ざっている。
だがそれでいい。
不完全な鼓動こそが、自分が生きている証なのだから。
「……本当に終わったのかな」
隣に立つ真白が小さく呟く。
その横顔には、以前の無表情ではなく、柔らかな揺らぎがあった。