次の日、ユリアは心に決意を固め、町の役場に足を運んだ。彼のことが気になり過ぎて、その真相を知らずにはいられなかった。役場の中は落ち着いた雰囲気で、彼女の足音が響いていた。
「記憶を失ったという男の情報はないでしょうか？」ユリアは窓口の職員に尋ねた。職員はしばらく考えた後、データベースを検索し始めた。
しばらくの沈黙の後、職員が顔を上げ、「数年前に町を去ったとされる男がいます。その人物と顔立ちが非常に似ていますが…」と言いながら、モニターをユリアに見せた。
モニターに映し出されたのは、彼とそっくりの顔を持つ男の写真だった。彼の名前は「渡辺誠」と記されていた。彼は数年前に突如として町を去り、それ以後、彼の消息は途絶えていた。
ユリアは心の中で驚きを隠せなかった。彼は「渡辺誠」なのだろうか。それともただの偶然の一致なのだろうか。
役場を出たユリアは、彼にそのことを話すべきか迷った。しかし、彼には正直に事実を伝えることが最善だと考え、家に向かった。
夕方、ユリアは彼をリビングに呼び出し、役場で得た情報を話し始めた。「君のことを調べたんだ。役場の記録によれば、君とそっくりの人が数年前にこの町を去ったって…」
彼の表情は驚きで固まり、しばらくの間、言葉を失っていた。「それは…私ではない。だって、自分が誰なのかすら覚えていないんだ。」彼の声は震えていた。
ユリアは彼の目をしっかりと見つめた。「でも、その写真に写っている人は君と瓜二つなんだ。」
彼はしばらくの間、言葉を探していた。「もしかしたら、それが本当の私なのかもしれない。でも、記憶が戻らない以上、何とも言えない…」
彼の返答に、ユリアの心にはさらなる疑念が湧き上がってきた。彼が真実を言っているのか、それとも何かを隠しているのか。彼が失踪事件に関与しているのではないかという疑惑も消えなかった。
その夜、ユリアは眠れぬ夜を過ごし、彼に対する疑念が深まるばかりだった。彼の真意や背景、そして失踪事件との関係を突き止めるため、ユリアはさらに調査を進めることを決意した。
