希望のカフェ – 第2話

恐縮しながらコーヒーを淹れようとする勇気の手先はぎこちない。母のようにスムーズに湯の温度を測り、タイミングを計り、淹れることがいかに大変かを改めて感じる。

「いいのよ、そんなに気を張らなくても。亜希子さんのコーヒーの味は一朝一夕じゃ真似できないだろうけど、あんたならきっと大丈夫」

男性客はそう言って、まだ少し薄いコーヒーの味にかすかな苦笑を浮かべながらも、温かい眼差しを向ける。その様子に勇気は少しだけ肩の力が抜ける気がした。

しかし、店を回していくうえでの本当の問題は、それだけではなかった。昼過ぎになり、勇気は仕入れ先へ挨拶に行くため、一時的に店を早めに閉める。小さな商店街を抜けた裏路地にある卸売業者に顔を出すと、担当者は新規に契約を見直したいと言い出した。

「今後の取り引き条件を改定したいんですよね。コーヒー豆や牛乳だけじゃなくて、砂糖の仕入れもまとめていただきたい。そうすれば単価を少し下げられるかもしれません」

「まとめて仕入れる……ですか。それはありがたい気もしますけど、在庫スペースや消費期限の問題もあって……」

都会の大企業であれば、大量購入によるコストダウンは常套手段だ。しかし、この小さなカフェでは食材の保管場所が足りないうえ、期限切れを出せばかえって損失につながる。勇気は慎重に話を進めようとするが、相手はなかなか譲歩せず、煮え切らないまま挨拶を終える。

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