希望のカフェ – 第3話

ところが、その夜になって、亜希子はまた高熱を出して倒れてしまう。急いで救急車で運ばれた先の病院で、医師からは「今は安静にしていただくしかないですね」と告げられるだけだった。わずか半日前にはあんなに笑顔だった母が、今はぐったりとベッドに横たわり、呼吸も浅い。勇気は頭の混乱を抑えながらベッド脇に腰かけ、亜希子の手をそっと握りしめる。

「母さん、また店に戻ってこられるよね……?」

言葉にできずにただ俯くと、亜希子はうっすらと目を開け、微弱な声で「大丈夫よ……」と返す。しかしその声は頼りなく、これまでに比べても衰えが目立つ。痛む心を抑えるように、勇気は震える息を吐くしかない。

「まだ母さんに話したいこと、山ほどあるんだ。ありがとうとか、これからのこととか……」

そう考えれば考えるほど、思いが膨らんでしまい、言葉が出なくなる。カフェの経営、町の人たちとの絆、これからどう守っていけばいいのか、母の負担を減らしながらどこまで踏ん張れるのか。悩みは尽きないが、今は母の生命力だけを信じたい。

病室を後にし、夜風にあたると、胸の奥がひどく痛んだ。体力的にも精神的にも限界が近いかもしれない。それでも町の人々が差し伸べてくれる手、母が若い頃から大切にしてきた思い、それらが重なり合って彼を支えている。勇気は空を見上げ、小さく深呼吸をする。今はただ、一歩ずつ前に進むしかない――その思いを噛みしめながら、カフェへと続く道をゆっくりと歩き始める。

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