深海の叫び – 第4章:狂気の深化と恐怖の連鎖 後編

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第4章:前編|後編

異常現象の連鎖と暴走する集団

探査艇内は、まるで凍り付いた空気が流れるかのように不穏な静寂に包まれていた。しかし、その静けさは長くは続かなかった。突然、モニターに映し出された異常な数値が、次々と報告され始める。制御室のディスプレイは、深海からのエネルギーの暴走を示すかのように、急激な温度変動、磁場の乱れ、そしてそれに連動する微妙な振動波形を映し出していた。各センサーが検知する数値は、これまで蓄積されてきた正常値から大きく逸脱し、隊員たちはその異常性に戸惑いと恐れを隠せなかった。

斎藤は、ブリッジに設置されたコンソールの前に再び座り、厳しい面持ちでデータを丹念に確認していた。「この変動は、単なる機器の故障とも、偶然の乱れとも考えられない。深海から送られる信号の振幅が急激に大きくなり、周期的なリズムを刻むように現れています。これは、あの物品からの影響が、我々の精神にまで及ぼすほどのエネルギーを伴っている証拠だ」と、低く、しかし明確な口調で語った。

そのとき、通信室から中村の落ち着いた声が響いた。「斎藤さん、北側のセクターからのデータに注目してください。そこでは、隊員の心拍数と脳波に、明らかな異常上昇が見られると同時に、全体の環境温度も急激に上昇しています。まるで、何かがこの空間に突如として影響を及ぼしているかのようです」彼女は、すでに各隊員の健康データをリアルタイムで監視しており、その結果に基づいて冷静に状況を伝えた。

ドクター・ローレンスもまた、異常データに釘付けになりながら、独自の見解を述べた。「この現象は、古代の封印が解かれた結果、エネルギーが解放され、連鎖的に我々に降り注いでいると考えられます。数値は、まるで儀式の一環として刻まれた呪文のリズムを再現しているかのようです。私の解析では、このリズムが、探査隊全体の精神状態に悪影響を与え、暴走する群衆のような現象へと突入させようとしている可能性が高いのです」彼の声は、いつしか冷静さと情熱が混じり合った独特の響きを持ち、隊内の空気をさらに熱くした。

斎藤は深い眉をひそめながら、コンソールの前で言葉を発した。「我々は、ただこの異常現象を記録するだけでは済まされない。今後、精神面と身体面の両方で、対策を講じる必要があります。特に、北側セクターでの急激な変動は、隊員一人ひとりの精神に重く影響しており、これ以上無視することはできない。中村、各自の健康状態を即座に再確認し、異常が現れた場合、迅速に対応できるよう体制を再編してください」

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