大空の船 – 第7章 前編

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第7章:前編|後編

灰色の雲間を抜けて、アルバトロスが静かに高度を上げていく。古代都市で得た新しい浮力制御技術を取り入れた結果、船体の安定度は以前より増していたが、その分、高高度特有の厳しい気圧や気温への注意も怠れない。アレンたちは空賊の脅威や都市の守護者との衝突をひとまず乗り越え、再び未知の空域へと進む決断を下していた。

「高度は順調に上がってるけど、ちょっと風が強まってきたわね」

操縦席付近から、リタがコンパスや気象計をチェックしながら声をかける。彼女は古代都市で学んだ知識を応用し、飛行時の浮遊石や推進力のバランスを常に見張っている。

「乱気流があるのかもしれない。ラウル、ちょっと気をつけろ」

アレンが操縦輪を握るラウルに合図を送ると、ラウルは短くうなずいた。

「わかってる。高度計が少し上下にブレてるな。慎重にコースを修正しよう」

雲が薄く切れる瞬間を狙って、アルバトロスはさらに上空へ滑り込む。ときおり夜明けの光が差し込み、船の甲板が淡い金色に染まると、クルーたちは短い休息に浸る。疲れや緊張で硬くなった心が、柔らかくほどけるような感覚だ。

そんな静寂のとき、甲板で見張りをしていたライナスが急に立ち上がり、望遠鏡を慌ただしく覗き込んだ。

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