大空の船 – 第4章 後編

ライナスが眉をひそめると、ラウルは鉄板を仮止めしつつ、「あの空賊がここにも現れたらどうする?」と低い声で返す。

「あの攻撃力は尋常じゃない。あれだけの砲撃を、しかもこんな高高度で繰り出せるなんて……」

するとそこへ、小柄な若者が息を切らしながら駆け寄ってきた。島の住民らしく、空賊への恐怖を隠しきれない表情だ。

「あ、あんたたち! どうやら空の方でまた飛行船が飛び回ってるって話が広まってる。もしやあの賊が戻ってきたら……」

若者は焦りに震えた声でそう伝える。アレンが「わかった、ありがとう」と言い、怪我の手当てをしていたリタも急ぎ甲板に出る。

「やっぱり奴らが島近くを巡回している可能性があるね。こっちも防御の体制を整えなきゃ」

ラウルは鉄板の上に工具を置き、静かに口を開く。

「このままじゃ、再襲撃を受けたらひとたまりもない。せめて鎧板をもう少し強化して、逃げ切るだけの推進力を確保しないと」

アレンも同感だったが、今のアルバトロスでは修理に必要な資材が不足している。町や商業地まで行きたいところだが、そこへ向かうためにはもう一度大空を飛ばなければならない。

「でも、どうしてあの空賊は俺たちを狙ったんだ? たまたま通りすがりってわけじゃなさそうだったよね」

リタが思い返すように言うと、ラウルは瞳を細めて、「ああ、船体を見て“何か珍しいものがある”と睨んだんだろう。もしくは、そもそも奴らはこの辺一帯を支配するつもりかもしれない」と唸る。

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