大空の船 – 第4章 後編

「昔はこの島にも外からの商隊がやって来た。しかし、空賊の被害が増え、今では誰も寄りつかなくなった。人々はただ細々と畑を耕し、空に浮かぶこの土地から出られずにいる。お前たちも、ここに長くいるわけにはいくまい」

アレンは胸にこみ上げる無力感を押さえながら、決意を新たにするように深く息を吐く。

「わかりました。修理を急ぎます。こんな状態の船でも、じっとしていては元も子もない。ガイウスの配下が本格的に来る前に、別の場所へ移動します」

リタとラウル、ライナスもそれぞれ作業を急ぐように小さく頷いた。部品が完全でない中での修理は難航を極めるだろうが、時間がない以上、応急処置で船を再び飛ばすしかない。

島の若者と一緒に、リタが船底の穴を金属片と特殊な樹脂で塞ぎ、ラウルは外板の取り付けを手伝いながら操縦系統を念入りにチェックする。ライナスは集落に伝わる古い航路図を調べ、近くに大きめの浮遊島か、物資が手に入りそうな町の所在を探す。アレンは全体を指揮しつつ、エンジン出力に限界があることを踏まえた運航プランを練る。

「どこへ行くにせよ、紅蓮のガイウスと正面から衝突するのは今は避けたい。防御もままならない船で勝負しても、勝ち目は薄い」

ラウルが真摯な表情で言い、ライナスも「そうだな。まずは安全に物資を補給して、船を整えられる拠点を探そう」と同意する。

日が暮れるまでかかってようやく最低限の修理を終え、アルバトロスは明日の早朝出発を目指すことになった。長老が「今度こそ無事に空へ戻れるといいが……」と心配げに声をかけてくれる。アレンは感謝しつつ、「どうにか飛べるようにはなりました。ここでいただいた支援は必ずお返しします」と頭を下げた。

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