大空の船 – 第4章 後編

「空を飛ぶってのは、夢や憧れだけじゃなくて、責任も伴うんだな」

ラウルがつぶやき、ライナスはわざと明るい調子で「いいじゃねえか。大抵の冒険はリスクがあってこそ燃えるもんだ」と笑みを返した。リタは小声で「やれやれ、命あっての冒険だけどね」と付け加える。

アレンは苦笑しながら、皆が同じ方向を目指していることに安心感を覚えた。空を恐れるだけでなく、そこに希望も見出そうとしている仲間たち。この絆があれば、どんな脅威にも立ち向かえる――そう信じたい。

夜が明ける前に、アルバトロスは島の人々に見送られながら離陸準備を始める。修理したばかりの船体はまだ痛々しいが、先へ進むしか道はない。ほんの少しの風の変化にラウルが注意深く反応し、リタがエンジンの圧力計を睨みながら慎重に出力を調整する。ライナスは地図とコンパスを片手に、「南東へ進めば比較的大きな町がある」と教えてくれた。そこへ着けば部品を手に入れられるかもしれない。

「いざ、発進だ」

アレンが甲板から声を上げると、メンバーはそれぞれ気を引き締める。穏やかな朝焼けが空に広がるなか、アルバトロスは浮力を得て静かに浮上した。まだ紅蓮のガイウスが直接現れたわけではないが、その影は確実にこの空域に落とされている。クルーたちは警戒を怠らず、新たな航路を目指す。

少しずつ高度を上げながら、アレンは心の中で「俺たちに何ができるのか」を問い続けていた。守るべきものは何か、紅蓮のガイウスという脅威にどう立ち向かうのか。いずれは避けられぬ対決になるのかもしれないが、それでもアルバトロスが目指す空の未来を捨てるわけにはいかない。己の力不足を痛感しつつ、アレンは舵輪を握るラウルを支えながら、新たな未知の空へ飛び出していく。

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第4章:前編|後編

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