大空の船 – 第4章 後編

すると島の集落からもう一人、年配の男性がやって来た。島の長老のような立場らしく、穏やかながら厳かな雰囲気をまとっている。アレンが状況を説明すると、長老は静かに首を振り、「あの賊は“紅蓮のガイウス”の手下だろう」と呟いた。

「紅蓮のガイウス……そんな名前、聞いたことがあるのか?」

ライナスがすかさず尋ねると、長老はゆっくりと頷く。

「ここ最近、空賊の中でも頭ひとつ抜けた存在がいると噂だ。紅蓮のガイウスと名乗り、古代の飛行技術をかじっているとか。奴に逆らえば、どんな船でも打ち砕かれると聞く」

それを耳にしたアレンは表情を険しくする。古代の飛行技術……ゴードンの工房で見た失われた部品や設計図を思い出した。もしそれを悪用する存在がいるなら、今後の空の旅は想像以上に危険が伴う。

「紅蓮のガイウス……」

ラウルもその名を反芻しながら、険しい顔を見せる。元軍人として培ってきた勘が、ただのはったりではないと告げているのだろう。

「やつがどんな奴かはわからないが、あの飛行艇の火力を見ればただ者じゃないことは確かだ。それでこの島の人たちも空賊を怖れてるのか」

長老は遠い目をして語る。

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