大空の船 – 第6章 前編

その言葉に、アレンは躊躇いながらも「わかってる。でも、僕たちの船を強化するには、この都市の技術を学ばないわけにはいかないんだ」と言葉を返す。

リタが、手の中の水晶石をじっと見つめたまま口を開く。

「じゃあ、まずは住民たちに許可をもらってから、改めて装置の構造を確認させてもらおうか。私もエンジンの改造案を練りたいけど、勝手にやったら確実に揉めるよ」

ライナスは書庫で借りた古代文字の資料を手に、「住民の一部は、外の世界へ思いを馳せる若者もいるみたいだ。仲介してもらえるなら、それなりに話は進むかもしれない」と提案する。アレンも「そうだな。衝突は避けたいし、彼らが守り続けてきた技術を勝手に使うのは失礼だ。いったん話をしよう」とうなずいた。

しかし、その思いはすぐに壁にぶち当たる。住民たちが一堂に会し、都市の広場で協議を開いた際、長老派と若い世代の間で激しい対立が表面化したのだ。

「よそ者にこれ以上、都市の遺産を触らせるべきではない。あの者たちの背後に何があるのか、我々には分からぬ」

長老派の一人が、険しい表情でアレンたちを睨む。対して、住民の若者が「彼らは確かに外から来たけど、この都市を壊そうなどとは思っていないはず」と弁護しようとするが、相手は頑なだ。

「かつてこの技術を巡って大きな争いが起こったことを、我々は忘れてはならない。強大な力があれば、それを悪用しようとする者も必ず現れる。紅蓮のガイウスとやらが、この都市を狙わないとも限らないのだぞ」

その名にアレンたちの心が揺れる。紅蓮のガイウス――空賊の首領であり、古代技術を悪用しているかもしれない相手。もし奴がこの都市の技術を欲しているとしたら、住民が警戒するのも当然だ。

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