大空の船 – 第6章 前編

ある日、リタが都市の一角で小型エンジンの試作品を動かし、浮遊石と水晶を組み合わせた実験をしていた際、長老派の一人が激昂して駆け寄ってきた。

「勝手に動力を起動する気か! 都市全体を危うくするつもりか!」

リタは慌ててスイッチを切り、「いえ、暴走しないよう十分に対策はしています。こんなの小さなテストです」と弁解するが、相手は耳を貸さない。激しい言い争いが始まろうとするのを見かねて、アレンが間に割って入る。

「すみません、勝手にやったわけじゃなく、ソエンたちの了解は取ってます。都市を壊す気なんてありません」

だが、相手は「ソエンだと? あの若造の許可など何の権限もない!」と怒鳴り返す。あたりの住民が集まり始め、雰囲気は険悪ムードに染まっていく。

結局、ラウルとライナスがその場をなだめて収めたが、古代の秘術をどう扱うかという問題はますます住民の内部対立を深める結果になった。外の技術や知識を取り入れることを望む若者と、閉ざされた平穏を守り抜こうとする長老たち。その間でアレンたちは文字通り板挟みとなり、焦りと罪悪感を感じながら、何とか友好的な道を模索する日々を送る。

「今のままじゃ、対立が深まるばかりだ。俺たちが原因を作ったようで申し訳ないが……」

ラウルが石壁にもたれながら溜息をつくと、アレンも「でも、紅蓮のガイウスの脅威を考えれば、いつまでも閉じこもっていられないはずだ」と考えを巡らせる。リタは「そのためにも、安全な利用方法を証明するしかない」と前向きに言うが、ライナスは気遣わしげに彼女を見た。「焦りは禁物だぞ。下手に危険な装置を動かせば、逆効果になる」

周囲がぎくしゃくする中、ソエンたち若い住民だけはアレンたちを信頼し続けていた。彼らは古代の機械のデータを提供したり、封印区域へ通じる内部経路をこっそり教えてくれたりと協力的だ。だが、その行動が長老派の逆鱗に触れるのは時間の問題だった。実際、ある夜には長老派がソエンを問い詰め、「外の者と組んで都市を壊す気か」と責め立てたらしい。ソエンが必死に反論した結果、より一層の亀裂が生まれてしまった。

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