大空の船 – 第6章 前編

こうした小さな衝突を繰り返すうちに、都市の空気は張り詰めていく。アレンたちには、古代の秘術をどこまで使っていいのか判断する権限もなければ、住民の内部事情に踏み込みすぎる資格もない。だが、時間は限られている。紅蓮のガイウスをはじめとする空賊の動向も気になるし、アルバトロスの改修を放置すれば、次に空を旅する際にまた大きな危機を迎えるかもしれない。

「ここは一度、長老派と話し合いをして、具体的な利用案を示すしかないかもな」

アレンは疲れた表情を浮かべながらも決意を固める。ラウルやリタ、ライナスも同意し、「争いを起こしたいわけじゃない。私たちがどうやって秘術を安全に使うのか、きちんと説明したい」と声をそろえる。ソエンも「大丈夫。俺たち若い者がサポートするから、絶対にうまくいく」と握手を交わし、次なる一手を打とうと前向きに動き出す。

新たな翼を得るための古代の秘術――それを巡る対立は、外の世界に踏み出したい住民と、閉じこもり続けたい住民の衝突を激化させる。どちらも一方的に悪いわけではない。むしろ、互いが大切にしてきた価値観をどう共有するかが鍵となる。アレンたちは仲間とともに、なんとか住民を説得して、アルバトロスの改修を進めたいと願う。

けれど、その道は一筋縄ではいかないことを、誰もがひしひしと感じはじめていた。都市を守り抜くための願いと、世界へ踏み出したい情熱と、外部から来たクルーたちの思惑。絡み合う思いは、すでに静かではいられない渦を巻き起こそうとしていた。

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