大空の船 – 第6章 前編

ラウルが前に進み出て、住民の言葉を受け止めるように一礼する。

「俺たちも、あのガイウスがただの空賊とは思えないほど強大な力を持っていると感じている。だからこそ、あなた方の技術が必要なんだ。決して私欲ではないし、都市を守るためにも協力してほしい」

しかし長老派は首を振る。「お前たちがどう言おうと、外の者に古代の秘術を渡すわけにはいかない。兵器となれば、また多くの血が流れるだろう」

話は平行線かに思えた。そのとき、若者の一人が「古代都市の力は兵器だけじゃないはずです。人々を救い、世界を豊かにする可能性だってある」と訴える。リタもそれに呼応するように「そうですよ。空を飛ぶ船をより安全にしたり、浮遊石の活用を高めたり、きっと平和に繋がる使い道があるはずだわ」と声を上げる。

長老派は苛立ちを隠せない様子だったが、彼らもただ闇雲に拒絶しているわけではない。住民を守る責任があり、外の世界が巻き起こす争いに巻き込まれたくない思いが強いのだろう。

やがて議論は白熱し、住民同士でも衝突が始まった。若者たちは「都市を封じ込めていてもいずれ滅びる。外との交流を増やし、未来を切り拓くべきだ」と叫び、長老派は「そうやって過去に滅びの道を歩んだことを忘れたのか」と反論する。

アレンやリタは、住民同士の口論を前に身動きできずにいた。自分たちの目的が、彼らの内部対立を加速させているかもしれないと感じると、後ろめたさや申し訳ない気持ちがこみ上げる。

「……ちょっと離れよう」

ライナスがそう提案し、アレンたちは会議の輪から少し離れた場所に移動する。ラウルは溜息をつき、「こうなるのは想定してたが、難しいな」と呟いた。

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