大空の船 – 第6章 後編

翌日、薄暗い朝靄の中、アレンたちは都市の奥深くへと足を踏み入れた。ソエンを含む若い住民数名も同行し、長老派の老人が「本当に危険だから注意せよ」と呟きながら案内役を務める。都市のさらに下層へ続く階段を下りるたび、空気は冷たく湿り、古い石造りの通路には風に乗って響く不気味な音がこだまする。

「この先が“中枢区画”に通じる門だと聞いていますが、普段は閉じられていて、長老以外は立ち入れないんですよね」

ソエンが低い声で長老に問いかけると、長老は無言で頷き、手にした古い鍵で石扉を開ける。ぎぎぎという軋んだ音とともに重厚な扉が少しずつ動き、やがて内部への道が姿を現す。

「ここから先は、誰一人として踏み込んでいないと言ってもいい。中に危険な仕掛けがあるのか、それとも装置そのものが暴走しているのか、まったくわからん」

一行が奥へ進むと、不思議な浮遊石の燐光が壁面を薄く照らしていた。ラウルが慎重に周囲を警戒し、リタは渡された古代文字の断片を読み解きながら、制御装置がどのように配置されているのか考えを巡らす。ライナスは脚元を照らすランプを手に、崩れそうな床や罠の可能性を探りつつ先導役を買って出る。

「うわ、見てくれよあれ」

ライナスが指し示した先には、巨大な歯車のようなものが壁に埋まっており、中央に円形のパネルが組み込まれていた。淡い光が周期的に点滅しており、生きている機械のようにも見える。リタが駆け寄り、「多分、これが制御装置の一部じゃないかな。試しに触ってみてもいい?」と周りを伺う。ソエンは緊張しつつも「大丈夫、ここまで来たら後戻りはできない」とうなずいた。

リタがパネルに軽く触れると、ボンという低い振動音が周囲に伝わり、壁の歯車がわずかに回転し始めた。すると突然、石畳の床に亀裂が走り、床の一部が沈み込んでいく。

「うわっ、みんな下がって!」

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