大空の船 – 第6章 後編

「この“核心”を動かすには、古代の儀式を行う必要があると伝えられてきた。しかし詳しい方法は半ば失われている。我々もずっと恐れてきたのだ。万が一、誤って力を暴走させれば、都市全体が崩壊しかねない」

ソエンが身を乗り出し、「ですが、放置したままでは都市の浮力もいずれ失われると聞きます。そろそろ、真剣に向き合う時期なのではありませんか?」と訴える。視線を交わす若者たちも、ここまで来て引き返す気などない。

アレンは皆の視線を受け止め、覚悟を固めた顔で言った。

「僕たちが試してみます。強引に起動するわけじゃない。むしろ、正しい手順を解明して、安全に制御できるようにしたいんです。そのために、この“核心”の内部構造を調べさせてほしい」

長老は険しい表情のまま沈黙していたが、ついにゆっくりと頷く。

「もしも暴走の兆しを感じたら、即座にやめろ。そうでなければ、都市は救われないかもしれん」

こうしてアレンたちは核心の表面を丁寧に調査し始める。リタが水晶部分の配線や発光状態を観察し、ライナスは周囲の壁の古代文字を読み解こうと奮闘。ラウルは周囲を警戒し、再び罠が作動しないよう注意を怠らない。若者のソエンたちも力を合わせ、差し込む微弱な光の下で資料を広げたり、内部へのアクセスパネルを探したりと大忙しだ。

数時間にわたる作業の末、リタがある程度の仕組みを把握し、「古代文字の儀式的なコードを読みながら、結晶に微弱なエネルギーを流してやれば、制御モードに移行できそうだわ」と指摘する。長老は半信半疑ながらも、「やるしかないようだな」と重い口を開く。

そして一同の前で、リタがそっと水晶石に触れ、アレンが古文書にある呪文のような文字を声に出して読み上げる。すると薄暗い空間に一瞬、青白い閃光が走り、核心が低く唸りを上げた。床が小刻みに振動して緊張が走るが、同時に先ほどのような破壊的な罠は作動しない。

「止めるか?」

ラウルが警戒するが、リタは「いや、まだ大丈夫。エネルギーが安定化してるわ」と叫び返す。ソエンたち若者も息を詰めて見守り、長老さえも脅えの中に一縷の期待を見せている。

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