古書店の秘密 – 第2話

第1話 第2話

組み合わさるピース

美雨は、日記に記載された本たちのリストを手に、「紙の旅人」内を巡りながら各本を探していった。古びた棚から、記されたタイトルや著者名に合致する本を次々と取り出した。

最初に取り出されたのは、大村裕の「夏の日の思い出」。指定された34ページを開くと、「時計の針が」という文節の後に、綴られていた文章は「午後の静けさを切り裂いて、遠くの鐘の音が響いた。」というものだった。美雨は、この文章が暗号の鍵となる部分であると直感した。

日記には、さらに10冊以上の本に関する指示が記されており、それぞれの本から取り出される文節を繋げることで、次のような文章が浮かび上がってきた。

「午後の静けさを切り裂いて、遠くの鐘の音が響いた。その日、私たちは家族の秘密を知った。戦争の中、私たちの先祖はある約束を交わし、それが今の私たちに大きな影を落としている。その真実を知るためには、家の裏にある古井戸を探せ。」

美雨は驚きのあまり、しばらくその場に立ち尽くした。このメッセージが示唆するものは、彼女の家族にとって大きな意味を持つ可能性があった。祖父・昭夫がなぜこのような形で秘密を伝えようとしたのか、その理由はわからなかったが、彼女はこの新たな手がかりを追うことを決意した。



翌日、美雨は家の裏庭を探索し始めた。多くの草木が生い茂る中、彼女は古井戸の存在を確認することができた。しかし、その古井戸は長い間封印されていたようで、固く蓋がされていた。

井戸の蓋を開けることは容易ではなかったが、数日後の努力の末、彼女はついにその蓋を開けることに成功した。井戸の中からは、古びた木箱が見つかった。その中には、家族の歴史を示す写真や文書、そして昭夫の手紙が入っていた。

手紙には、家族の過去とそれに関連する事件、そしてその事件が昭夫の死とどのように関連しているのかが詳細に記されていた。それによれば、昭夫の先祖は戦争中、ある重要な情報を持っており、それを隠匿するために「紙の旅人」を設立したこと、そしてその情報が近年、悪意を持つ者たちの目を引くこととなり、昭夫がその情報を守るために命を落としたことが記されていた。

美雨は、この真実を知り、涙を流した。祖父が保持していた秘密、そしてその秘密を守るための彼の決断を理解することで、彼女は「紙の旅人」を守り続ける決意を新たにした。そして、その秘密を未来の世代に伝えるため、彼女は新たな日記を始めることとなった。