聖夜に注ぐレクイエム – 12月17日

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もう一つの姿

冷たい風が街を吹き抜ける12月17日、早坂怜子の失踪は未だ謎に包まれていた。警察署に戻った大沢陸は、デスクに散らばる怜子の資料に目を通していたが、その中に目新しい手がかりは見当たらなかった。控室から見つかった「レクイエム」の楽譜には意味深な記述があり、未解読のままだった。

「陸さん、これ、調べてみた方がいいかもしれません。」

若手刑事の田中が、怜子の過去を洗い直した資料を手渡してきた。そこには、怜子が通っていた音楽学校に関する記録があった。

「音楽学校の火災事故……10年前?」

陸は資料に目を走らせる。怜子が10代の頃、通っていた音楽学校で大規模な火災が発生し、当時の生徒数名が命を落としたという記録だった。怜子もその学校の生徒だったが、幸いにも怪我なく避難できたらしい。しかし、火災の原因は特定されず、一部では生徒間のトラブルが火種となったという噂もあった。

「怜子さんが、この事故に関係していたと?」

陸は田中に問いかけた。