静かな証人
冷たい朝の空気が、白く染まった街を包み込んでいた。大沢陸は、警察署で鑑識から届いた報告書を手にしていた。監視カメラの映像には、一瞬だけ映り込んだ不審な男の姿が記録されていた。その男は黒いフードを深く被り、顔のほとんどが見えなかったものの、控室周辺をうろつく姿が映っていた。
「監視カメラに映っていたのは、この人物だけだな?」
陸は鑑識の担当者に尋ねた。
「はい。ただ、この男が早坂怜子さんの失踪に直接関わっているかどうかは分かりません。ただ、映像に映った時間帯は怜子さんが控室にいるはずだった時間と重なっています。」
「なるほど。引き続き映像を精査してくれ。」
陸は報告書を手にホールへと向かう準備を始めた。再び三浦真知子に会い、監視カメラの映像について確認する必要があった。何か見落としている情報があるかもしれない。
ホールの裏手にある真知子のオフィスは、相変わらず書類で溢れていた。陸が訪れると、真知子は静かに席を立ち、彼を迎え入れた。