赤い蝶と青い鳥 – 第1章

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「高橋和彦さん、あなたは死んだのですか?」

佐藤健太郎は、テレビの画面に映る友人の顔を見つめながら、呆然と呟いた。画面には、高橋和彦という名前と、人気推理作家という肩書きが添えられていた。そして、その下には、衝撃的なニュースが流れていた。

「人気推理作家・高橋和彦さんが自宅で死亡 自殺の可能性も」

佐藤は、信じられないという思いで、テレビの音量を上げた。すると、アナウンサーの声が聞こえてきた。

「本日午前十時頃、東京都港区のマンションで、人気推理作家の高橋和彦さん(40)が頭を撃たれて死亡しているのが発見されました。現場には拳銃と遺書があり、警察は自殺の可能性もあるとみています。高橋さんは、現在発売中の週刊誌に連載中の最新作「赤い蝶」で話題を呼んでおり、ファンからの衝撃は大きいです」

「赤い蝶……」

佐藤は、その言葉に反応した。高橋が連載していた最新作だ。佐藤も読んでいた。その中には、高橋と同じ手口で殺される女性のキャラクターが登場していた。佐藤は、そのことを思い出した。

「そういえば……」

佐藤は、テレビを消して、机の上に置かれていた週刊誌を手に取った。その表紙には、「赤い蝶 第六話 高橋和彦」と書かれていた。佐藤は、そのページを開いて、目を通した。

「赤い蝶」というのは、高橋が考案した独自の殺人方法だった。それは、被害者の頭に拳銃を突きつけて引き金を引くというものだった。しかし、その際に被害者の頭から飛び出した血液や骨片が壁や天井に飛び散り、それがまるで赤い蝶のように見えるということから、「赤い蝶」と呼ばれるようになった。



「赤い蝶」は、高橋が書く小説の中では常に犯人不明のまま終わっていた。高橋は、「赤い蝶」を使った殺人事件を次々と起こす犯人の正体を暗示するようなメッセージを小説に仕込んでおり、読者に推理させるという趣向だった。

しかし、そのメッセージは非常に巧妙であり、誰も犯人の正体に気づくことができなかった。佐藤も含めてだ。

「このメッセージ……何か意味があるのかな?」

佐藤は、小説の最後に書かれていたメッセージを見た。それは、以下のようなものだった。

「赤い蝶は、私の愛した人を奪った者にしか見せない。私は、赤い蝶を見せることで、私の愛した人に報いるのだ。あなたは、私の愛した人を知っているか?」

佐藤は、そのメッセージに首を傾げた。高橋が書いた犯人の言葉だったが、佐藤には意味がわからなかった。

「私の愛した人……誰だろう?」

佐藤は、高橋が愛していた人物について考えた。高橋は、現在妻と暮らしていたが、佐藤はその妻とはあまり親しくなかった。高橋と妻の関係も、佐藤にはよくわからなかった。

「もしかして……」

佐藤は、ふと思いついた。高橋が以前恋愛関係にあった女性がいたことを思い出した。その女性の名前は、山田美咲だった。

美咲は、高橋が過去に書いた小説「青い鳥」に登場するキャラクターだった。美咲は、高橋に裏切られて自殺したという設定だったが、実際にもそうだったという噂があった。

佐藤は、高橋からそのことを聞いたことがあった。高橋は、美咲と付き合っていたことを認めていたが、彼女が自殺したことについては否定していた。佐藤は、その時の高橋の表情を思い出した。

「彼女は自殺なんかしなかったよ。彼女は……」

高橋は、そこで言葉を切ってしまった。そして、何かを隠しているような目をしていた。

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