「──次は漁師組合長を通じてだ。資金と勢力を一気に掌握しろ」
硬い声が響き、続いて別の声が応える。
「了解しました。日時は今週末、断崖の地下室にて。生贄の名は再度確認を──」
囁き声の合間、倉庫の奥で何かが立てる金属音が聞こえる。玲はそっと膝をつき、防寒ジャケットのポケットから小型カメラを取り出して扉の隙間から覗かせる。中央の床には円陣状に並べられたロウソクがわずかに揺れており、その中心には古びた文書が置かれていた。
「白井薫の声だ……」
玲が息を呑む。声の主は、組織の幹部・白井薫に違いない。青白いロウソクの炎が、彼の険しい表情を浮かび上がらせている。
「──ペンダントの力を爆発させる儀式は、前回の失敗からさらに改良を施した。代償を受け止める器を用意した者が新たな犠牲者となる」
白井の冷然とした声が、闇に沁み渡る。
高橋が震える声で囁いた。
「こんな……また生きた人間を……」
玲はそっと肩を叩き、ハーフミラー越しに高橋を見つめる。



















