白井は短剣を水平に掲げ、じりじりと二人に近づく。玲は咄嗟に封印箱の向こうに身を隠し、航を庇った。
「玲さん、どうします?」
航の問いに、玲は素早く呟いた。
「ここで止めを刺すしかない。短剣を持つ手を凌いで、飛び込むんだ」
玲が合図とともに飛び出す。短剣を構えた白井はその動きに一瞬面を引きつらせたが、すぐに笑みを浮かべた。
「儀式を邪魔する者は、生贄としての資格がある」
白井は短剣を振りかぶり、牧歌的な儀礼の残骸を蹴散らしながら斬りつけてきた。玲は腕をかすめる一撃を避け、間合いを詰める。戦いの火蓋が切って落とされた。
月光の下で短剣を交わす音が鳴り響く。航は横合いから石板の破片を拾い、白井の足元へ投げつけて足を止めさせる。玲は咄嗟に封印箱を抱えながら白井の腕を掴み、短剣を弾き飛ばした。
「もう終わりだ……」
玲は息を整えながら言うと、封印箱を地面に叩きつけた。箱の外殻がわずかにひび割れ、刻まれた家紋が光を放つ。白井はその光に目を奪われ、動きが鈍る。
「何を……!」
白井は狼狽して短剣を拾い上げようとするが、封印箱から放たれた淡い光が彼の意識を覆う。祭壇の亀裂が再び浮かび上がり、光が地下室を満たした。



















