光が収束すると、白井の姿はその場から消えていた。短剣だけがひっそりと転がり、砂利に突き刺さっている。玲はゆっくりと光を消した封印箱を拾い上げた。
「……封印は完全だ」
玲は高橋に向かって頷き、肩越しに地下室の入り口を見上げる。高橋は震える声で応えた。
「これで、町には平穏が戻るんですね」
玲は深く息を吐き、微かに笑んだ。
「希望と代償の鎖は断たれた。だが、真実はまだ多くの闇に葬られている」
二人は崩れかけた階段を上り、夜の空気を吸い込んだ。海風に混じる潮の匂いが、封印を果たした者たちを優しく迎えた。
申し合わせたように、玲は肩から封印箱を下ろし、高橋はコートの襟を正した。
「行こう、航さん。まだやらねばならないことがある」
その言葉を合図に、二人は夜明け前の旧松永邸を後にした。風が運ぶ砂と波音が、静かに新たな朝の訪れを告げていた。
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