異世界農業革命 – 第7話

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 エル・リーフ村では魔力暴走が深刻化するにつれて、期待していた豊作が一転、大打撃を受ける危険が高まっていた。異常に高まった魔力が土壌に入り込み、作物が枯れるか、あるいは変質してしまうリスクすらある。そのうえ、魔物や盗賊が立て続けに襲撃してくるため、村の守りにも多くの人手が割かれる状況が続く。これまで培ってきた農業技術がすべて無に帰すかもしれないという恐怖が、村人たちの間に広がっていた。

 そんな中、大河一樹は緊急対策として「魔力の調整システム」の考案を進めていた。シルヴィアの魔法によって魔力を制御する仕組みを導入し、土壌に過剰な魔力が蓄積しないように魔法陣そのものを改良するのだ。畑の一角に巨大な魔法陣を描き込み、余剰となった魔力を一時的に吸収・放出する“バッファ”のような役割を持たせることで、これ以上の暴走を防ぐ狙いがある。

「土壌に流れ込む魔力をそのまま放置すると、作物はおろか微生物まで不安定になってしまいます。でも、ここに魔法陣を敷いて魔力を一度吸収させれば、コントロール可能な形で放出できるはずです。」

 シルヴィアは魔法陣の設計図を一樹らに示しながら説明する。複雑な紋様は彼女が長年研究してきた「魔力循環」の技術を応用したものだ。とはいえ、これまでやったことのない大規模な試みに、彼女自身も内心は不安を抱えていた。

「本当に、これであの凶暴な魔力の波を抑え込めるのか……?」

 ガイは無骨な剣を携えたまま、畑の隅に刻まれていく魔法陣を見下ろしながら唸るように言った。「シルヴィアが作った魔法陣なら信じるが、万が一暴走が止まらなかったら、村どころか俺たちもただでは済まないぞ。」