その時、突如として館内の一角で不穏な動きが感じられた。暗い通路の奥から、低い唸り声とともに何かが迫ってくるような気配が漂った。仲間たちは互いに顔を見合わせ、警戒態勢に入った。エリナが杖を構え、静かに告げる。
「何かが……この場所に潜んでいるわ。幻獣の仕業かもしれない」
ロレンスは、剣を手に取りながら答えた。
「神殿や図書館といった古代の聖域には、守護するための幻獣が配置されているのが常だ。警戒しろ」
その瞬間、薄暗い通路の先から、巨大な幻獣が姿を現した。体は光と影が交錯するような不思議なオーラに包まれ、瞳には古の知恵と警戒心が宿っているように見えた。幻獣は低いうなり声を上げ、一行に向かって猛然と襲い掛かってきた。
「来るぞ！」
ロレンスが叫び、剣を振るいながら前に出た。エリナはすかさず防御の呪文を唱え、仲間たちを守るための魔法の壁を展開した。ミカエルは、幻獣の動きを冷静に観察し、隙を見つけ出しては指示を出す。
陽斗は、その混乱の中で自らの内に秘めた領域能力の一端を使い、空間をわずかに歪ませる技を発動した。彼の技は、幻獣の動きを一瞬封じ込め、敵の攻撃を無効化するかのように働いた。幻獣は、その予期せぬ攻撃に動揺し、しばらくの間、攻撃のリズムを失った。
「今だ、エリナ！」
