異世界冒険者ギルドの日常 – 第1章:後編

「ティリア、矢に魔素を乗せてチャージして! ガルドはその間に重量板の上へ全力ジャンプ!」

「承知!」

 ティリアが矢を放つと同時に、ガルドが地面を蹴った。重圧と魔力が結界内を巡り、最後の灯具がぱっと白光を放つ。

 ――五分十三秒。制限時間は十分だった。

 悠斗は砂時計を止め、拍手した。

「合格! チームワーク、上々です」

 ティリアは息を整えながら髪を払う。

「まさか受付の指示で動かされるとは思ってなかったわ」

「私、細かい数字苦手だから助かった!」

 ガルドは豪快に笑い、リリィは満足げに頷いた。

 そこへクラリスが歩み寄り、帳簿を手渡す。

「この成績、王都へ送る新人評価に加えておくわ。――ユウト、あなたの指導力も高く評価できそうね」

「恐縮です」

 夕空は茜色。灯具の光が霞む中、三人の横顔はどこか誇らしげだった。

 悠斗は食券を差し出しながら、静かに宣言する。

「明日から“日替わり定食隊”の研修、正式スタートです。皆さん、よろしくお願いします!」

 ティリアが微笑み、ガルドが吠え、リリィが拳を上げる。

 異世界の窓口から始まった新たなチームは、まだ知らない大きな渦へと歩みだした。

 その足取りの先に待つ数字と書類と陰謀を、悠斗はまだ知らない――それでも、胸中の高揚は確かに未来を信じていた。

第1章: 前編|後編

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