異世界冒険者ギルドの日常 – 第6章:後編

「リリィ、ギアカタパルトで核へ接地グラウンド! ガルドは遮蔽板!」

 リリィが金ギアを投げ込み、ガルドがシールドで魔力流を円卓へ誘導。監査官マリエルは法典を開き、未承認条文を赤インクで抹消すると同時に円卓の端へ押印した。法典の権威が「幻想資産 = 無効」 と定義を上書きする。

 円卓が巨大な“差分式演算機”へ変貌し、白金核に接続された虚構数字を強制仕訳し始める。

 宰相の眉がピクリと動いた。「なるほど……だが演算速度の差で押し潰すのみ!」

 グラディウスが黒帳簿を弾き、核へ追加入力。今度は“債務保証”“敵国賠償”など実在しない科目が雪崩れ込む。桁は爆発的に増え、円卓は再び悲鳴を上げた。

「間に合わない……!」ティリアが唇を噛む。

 私は深呼吸し、セルへただ一つのマクロを打ち込む。

 =ROLLBACK(“最初の取引”)

 核に流れ込む全トランザクションが巻き戻され、数字列は王国創設時の決算書へたどり着く。そこに記載された「王国基本貨幣単位」は“1”。

 「原点復元。幻想資産へのリンク切断!」

 私は円卓中央のボタン形セルをタップし、《切離命令》を実行した。

 白金核の光が一瞬きらめき──そして真空のような沈黙のあと、崩れ落ちる。

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