「監査院からの正式辞令。『正規監査補佐官・深山ユウト』。ただし任命式は半年後。今は――ゆっくり窓口へ戻りなさい」
私は肩をすくめた。「窓口は大好きですが、少しだけ有給をもらえますか」
「もちろん」
中庭の木影で風が揺れ、遠く鐘の音が澄んでいく。
世界を揺るがす陰謀は帳簿一冊で終わり、王国はようやく赤字を知る。
けれどギルドの窓口には、きっと今日も新人冒険者の長蛇の列ができているに違いない。
私の戦場はあそこだ。数字は、誰かの“挑戦”を支えるためにある。
私は立ち上がり、「日替わり定食隊」に微笑んだ。
「帰ろう。窓口業務が、僕たちを待ってる」
陽光の中、仲間たちの笑い声が重なった。
――異世界冒険者ギルドの日常は、今日も続いていく。
第1章: 前編|後編 第2章: 前編|後編 第3章: 前編|後編 第4章: 前編|後編
第5章: 前編|後編 第6章: 前編|後編


















