荷受けカウンターに現れたのは、薄桃色の髪を揺らす少年──新人冒険者カミル。腕にはグリフォンの爪傷が生々しく残っている。
「報酬が足りなくて……治療薬を前借りできますか?」
彼は獲りたての魔物素材を抱えていたが、鑑定するとB級相当。標準価格でも薬代には届かない。
私は《エクスセル》を起動し、在庫リストから近々期限切れになるポーションを抽出した。
「これなら廃棄直前。半額で行けるよ」
少年の目が潤む。「ありがとうございます!」
が、処理を進めようとした途端、背後でリリィが悲鳴を上げた。
「布が燃えてる!」
振り返ると、鍛冶台のバーナーから飛んだ火花がまだ裁断前のチェインメイル生地に移り、白い煙が上がっている。
「あっちを見てる場合じゃ……!」
ティリアが水矢を放ち、ガルドが帆布で叩いて鎮火したが、布の端が黒く縮れていた。
「せっかくのミスリル糸が~!」リリィは涙目。
私は少年の傷口と焦げ跡を同時に見比べ、頭の中で数字を巡らせた。
(半額ポーション × 需要1、損耗布地 × 修繕費。……両方救える式は?)
「カミル君、提案がある」
私は仕訳帳をくるりと回し、布地の損耗分を“研修素材費”として扱う新たな行を追加した。
「新人研修用に防御布の修繕を体験――って名目で、あなたが手伝ってくれれば作業手当を支払える。ポーション代に上乗せすれば足りるはず」
「やります!」
少年は即答し、リリィも嬉しそうに頷いた。
「じゃあこの焦げをほどいて織り直す作業お願い! チェインメイルは細かいんだけど、君なら指が細いし向いてるよ!」
ティリアが布を広げ、ガルドは巨大ルーペを持ち出す。「細かい作業は苦手だが応援するぜ!」

















