異世界冒険者ギルドの日常 – 第9章:前編

 ガルドが人懐こい牙を見せる。隣ではリリィが新作の歯車ペンをくるくる回し、ティリアは地図帳を開いて最短ルートを計算していた。

 「みんな、付いて来る気満々だね」

 「受付係一人じゃ退屈でしょ?」とティリア。

 「数字に不具合あったら工具で直すし!」とリリィ。

 「祭りと聞いたら肉がある!」とガルド。

 クラリス支部長は微笑みつつ、机の引き出しから分厚い帳票を取り出した。

 「世界樹祭は各国支部の収支を“1本の大樹”に統合する式典。だがここ十年、黒字と赤字の枝が入り乱れ、財務システムが腐りかけている。あなたに頼れるのは数字と仲間の力よ」

 封筒にはもう一枚、小さな付箋が挟まっていた。

PS.

世界樹の根元で最近“数字が迷子になる森”が発生。

詳細不明。ご注意を。

             ――マリエル

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