開いた部屋には、枝葉を金貨で飾った小さな苗木と、その根元に重ねられた黒帳簿。ページをめくるとそこには「世界樹外部連結子会社」の文字――つまりギルド本部にも監査院にも載っていない“簿外勘定”だった。
「放置すれば祭り当日に世界樹へ不正資金が流れ込む」
私はページの端に赤インクで*印を付け、セルへ “連結対象外→対象へ統合” と書き込む関数を入力。
苗木の金貨が溶け、普通の葉へ戻る。霧が晴れ、森は静けさを取り戻した。
「世界樹祭を荒らす連中が動いてるのは確定だ」
私は帳簿を抱え、仲間たちを振り返った。
「セレシアへ急ごう。決算締切は待ってくれない」
馬車の轍は再び森を抜け、大陸中央へ伸びる。
世界樹祭決算――数字と森の戦いが、いま芽吹き始めた。
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