異世界冒険者ギルドの日常 – 第9章:前編

 小屋の扉を開けると内部は想像より広く、螺旋階段が地下へ延びていた。壁に刻まれた数式は見慣れた算術が途中で“÷0”に書き換えられ、文字通り空間が歪む。

 「ゼロ除算……数字のタブーだ」

 私が呟くと床が軋み、〈 ÷0 〉の記号が発光。

 すると階段は無限に下りても同じ踊り場へ戻る“無限ループ構造”に変化した。

 「このままじゃ外に出られない!」

 ティリアの矢が壁を貫くたび、数式は自己修復。

 私はセルにループ長を計測し、“IFERROR”関数を書き込む。

 =IFERROR(1/0,”有限化”)

 ゼロ除算にエラー処理を与える――すると数式は「有限化」に書き換わり、螺旋が一段だけ縮む。

 「面白ぇ! もっとやれ!」

 ガルドの剣が床の分数線を切断、リリィのレンチで“0”の輪を捻じ曲げる。

 最終的に階段は合計10段に縮み、最深部の扉が開いた。

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