数日後。
馬車はセレシアへ伸びる王立街道を進んでいた。左右には深い霧をまとう古森。ところどころ、樹皮に数式じみた紋様が浮かび上がり、薄紫の灯が点滅している。
「世界樹の予備回路だよ」リリィが興奮気味に囁く。
「魔力と情報を大陸中へ送る自然のネットワークさ」
ティリアは森の奥を見すえ、眉を顰めた。
「でも光が点滅するのは異常信号。誰かが不正アクセスしてる可能性が高いわ」
その時、霧の中から謎の小屋が現れた。扉には「数字の迷宮へようこそ」と古代文字、そして手描きの矢印がぐるぐる円を描いている。
「罠の匂いしかしねぇ」
ガルドは剣に手をかけるが、私は《エクスセル》を起動。霧濃度×距離変化をプロットすると、小屋は“移動式”――進行方向と同じ速度で森の中を滑って付いてきていると判明した。
「避けても追って来るなら、一度調べるべきだ」
意見を告げると、ティリアが矢を構え、リリィが工具鞄を締め直す。ガルドは馬を一声で止めた。



















