古びた手紙の秘密 – 第3話

それからもう一つの封筒の中身を確認すると、そこには祖母が自筆で「あなたとともに生きていきたい」と切々とした思いをつづった文章が収められていた。文字はところどころ擦れて読みにくい部分もあるが、それだけに祖母の必死さが伝わってくるような気がする。この手紙は差出人も宛名も書かれておらず、祖母が送らずにしまい込んだままになっていたのだろう。文面の最後には「どうか、あなたが元気でありますように」という祈るような一文が添えられ、それがアカリの心を強く締めつけた。

母は困ったような顔をしながら、「結局、ばあちゃんは誰に向けて書いたのかはっきりわからないし、余計な憶測をするのもどうかと思うのよ」と小さく息を吐く。けれどアカリにとっては、それが誰に宛てられたかは既に明白だった。カズマと若き日の祖母が一緒に写った写真が、そして祖母の部屋から出てきた最初の手紙が、二人の深い関係を示しているようにしか思えない。どんな事情があったにせよ、祖母がカズマに想いを伝え切ることのできないまま生涯を終えたのだと考えると、アカリの胸は複雑な痛みに襲われる。

その日はアルバムと手紙を預かったまま、急ぎ足で港町へ向かった。駅を降り、喫茶店「サクラ」へ顔を出すと、マスターである店主の女性が驚いたような表情で「また来てくれたの?」と声をかけてくる。アカリは軽く会釈を返しながら店内を見渡すが、カズマの姿は見えない。「今日はカズマさん、いらっしゃらないんですか?」と尋ねると、「さっきまでいたんだけど、ちょっと出かけたのよ。夕方には戻ってくると思うわ」と店主が穏やかに返してきた。アカリは店主にコーヒーを注文し、カウンターの隅で時間をつぶす。しばらくすると、外のドアが開き、少しうつむき気味のカズマが戻ってきた。

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