ニューロネットの夜明け – 第2章:ヴァル・セキュリティの影|前編

そう力強く言うのは、研究担当の一人。だがレオナルドはまぶたを伏せたまま、少し沈んだ表情を浮かべていた。彼の脳裏には、先ほどちらりと話題に上がったもうひとつのコードネームがこびりついている。

「ただし、‘プロジェクト・シナプス’に関わる部分については、今日この会議に出席しているメンバー以外に知られてはならない。セキュリティは万全を期してくれ」

レオナルドは言葉を選ぶように、しかしはっきりと強調した。部下たちは神妙な面持ちで頷き、部屋の空気が一瞬張り詰める。「プロジェクト・シナプス」という謎めいた言葉が放たれたが、大半の社員にとっては断片的な情報でしかない。何やら人間の意識や脳波を利用する高度な研究らしいが、具体的な中身はトップシークレット扱いだ。

「社外への情報流出は絶対に避けたい。特に、ハッカー連中の動きには注意が必要だ」

レオナルドはプロジェクターのリモコンを操作し、スクリーンに表示されるアクセスログの一部を拡大した。そこには昨夜、外部から侵入を試みた痕跡が記録されている。普通なら検知も難しいほど巧妙な手口だったが、新型防壁のテスト版が即座に弾き返した形跡が見て取れた。

「ここにあるログを見てわかるとおり、我々の試作システムは侵入の瞬間を捉えています。ただし、相手の身元や所在を詳細に特定するには至っていない。今後の改良点としては、追跡モジュールを強化することが必要だろう」

会議の参加者たちが一斉にペンやタブレットを走らせる。すると、レオナルドの横に座っていた幹部の一人が小声で耳打ちする。

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