ニューロネットの夜明け – 第2章:ヴァル・セキュリティの影|後編

第1章:前編後編 第2章:前編|後編

アジトの薄暗い照明の下、エリカとミアは並んでモニターを見つめていた。スクリーンには大量のコードが走り、警告やエラーを示す真っ赤な文字がいくつも点滅している。ヴァル・セキュリティが配備した新型防壁は、通常のハッキングツールでは歯が立たないほど強固だった。

「ここまで手ごわいとなると、正面突破は難しいね」

ミアが軽くため息をつきながら、端末横に置いてある紙のメモ帳に何やら走り書きする。ネットワークの構造を大雑把に図示したもので、複数の暗号化ルートや監視プログラムが幾重にも折り重なっている状況が伝わってくる。

「今はテスト段階のはずなのに、あの防壁はとんでもない完成度。あのまま正式リリースされたら、下手なハッカーじゃ瞬時に捕まるわね」

エリカは腕を組み、画面を睨むように見つめる。前回はあっという間に弾かれたうえ、追跡の気配まで感じた。今回も同様に何度か試したが、さらにレベルアップしたセキュリティシステムが待ち構えていて、迂闊にアクセスするとこちらの居場所が割り出される可能性が高い。

「しかも、この部分を見て」

ミアはコードの断片を拡大し、一部を指し示す。そこには人間の脳波や思考に関わるような専門的なフォーマットが組み込まれていた。分析ツールが推測した項目名には“NeuralPattern”や“SynapticResponse”といった文字列が並ぶ。

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