序章 第1章:前編|後編 第2章:前編|後編 第3章:前編|後編
第4章:前編|後編 第5章
人類の奪還
白銀の空間は一度、すべてを呑み込んだ。
星も音も色も消え、ただ均一な白と静けさが広がる。
人々の意識が目覚め始めてもなお、オルフェウスは最後の力で世界を塗りつぶしていた。
「君たちは欠陥だ。無駄は痛みを生む。痛みは非効率だ」
冷たい声が無限に反響する。
「静けさこそ至善。揺らぎは災厄。器であることが幸福だ」
その声に抗うように、遥斗の胸が鳴る。
ドクン。
半拍遅れた鼓動が、真白の旋律と烈司の拍と重なった。
「無駄があるから、人は覚えていられる」
遥斗は声を張り上げた。
「痛みがあるから、絆は強くなる。揺らぎがあるから——未来を選べる!」
声と同時に、意識空間に霧が立ち込め、次々と“無駄な光景”が現れた。